6日目


『内で粘るワークフォース!外からナカヤマフェスタ! 食い下がるワークフォース! 追いすがるナカヤマフェスタ! 内か外か、わずかに内か!?』
のああああああああああああああああああああ・・・ガバッ!・・
ハアハアハア・・・・・・ゆ・・夢か・・

・・というふうに起きたわけではないのだが、
昨日の興奮がまだ冷めあがらない状態で、珍しく目覚ましの鳴るまえに、バチッと目が覚める。
部屋のカーテンを開けるも外は真っ暗。時計を見るとまだ5時前。
二度寝しようかとも思ったが、目が完全に覚めてしまったので、
とりあえず、風呂に湯を入れてゆっくりと浸かる。
そういえば、こっちに来てからシャワーばっかりで風呂に一度も浸かってなかったなあ・・(^^;)
よく考えたら(よく考えなくても)、おいらはこのホテルに泊まるだけで、朝飯はほとんど食べてないし、水道もシャワーだけしか使ってないし、
超朝早く出て行って、超夜遅く帰ってくるし、ぜんぜん元が取れてないやん!
・・というわけで、ささやかな抵抗として、テレビでもつけてみる。(なんじゃそりゃ)
いきなり素っ裸の人が写った。大いにうろたえる。・・ゆ・・有料放送ちゃうやろな・・(おろおろ)
ところがふつうの日本でゆう民放番組だった。
とにかくヘンな番組だった。写る人写る人全員が素っ裸なのだが、いやらしさは全くなく、素っ裸で暮らしている人たちの生活を淡々と写している。
見たかんじ、どこにでもあるような現代ふうの家、街、そしてどこにでもいそうな欧米人たちなのだが、みんな素っ裸なのだ。それでいて、いかがわしさは全くない。
家庭で食卓を囲んで一家団欒している様子、大きなスーパーマーケットで買い物をしている様子、郊外でキャンプをしている様子が、俯瞰的な視点で淡々と流れる。
おとなも子どももみんな裸なのだがだれも突っ込まない。シュールとしかいいようがない。
ここは、そういう街なんだ・・。こんな世界があるんだ・・。そういう価値観の人々にスポットをあててるんやな・・
日本でいうとNHKのドキュメンタリーのような趣向の番組だったが、日本ではあり得ない内容でもあった。
どこにあんねんこんな街?と気にはなったが、数分で番組は終わり、そこがどこかは結局わからなかった。
目は覚めてるのに、夢からさめたような不思議な感覚でリモコンのスイッチを切り、出かける支度をはじめる。
カメラ、レンズ、それにipadを鞄に入れてホテルの1Fへ。当然、朝飯はこんな時間からやっていない。
仕方がないので、フロントのにいちゃんにカギを預け、この日も朝食を食べずにホテルを出た。

今日はオランダ&ベルギーに行こう♪ってことで、とりあえず、Gare du Nord(北駅)を目指すことに。
ノール・ピカレディー地方、TGV北部ヨーロッパ線、イギリスに向かうユーロスター、
そしてドイツ・オランダ・ベルギー方面に向かう国際列車タリスは、Gare du Nord(北駅)から発車する。
パリのターミナル駅は、Gare St Lazare(サン・ラザール駅)、Gare du Nord(北駅)、Gare de l'EST(東駅)、Gare de Lyon(リヨン駅)、Gare de Bercy(ベルシー駅)、
Gare d’Austerliz(オステルリッツ駅)、Gare d’Montparnasse(モンパルナス駅)の7つに大きく分けられ、それぞれ向かう方面(国)によって出発駅が変わる。
駅がたくさんあってややこしく感じるが、だいたいどの方面に行くのはどこの駅・・というふうに覚えてしまえばカンタンだ。
今回はGare du Nordに向かうので、空港から来たルートを逆に辿ることになる。ホテルからdenfert rochereau駅まで歩き、
RERのB線の空港方面行きに乗る。5駅でGare du Nordに着くので、そこで降りてエレベーターで上がれば、ターミナルの入り口に入る。

あらためて言う必要もないが、わたしは鉄ちゃんである。
もし、筋金入りの鉄ちゃんが、Gare du Nord駅のような、海外の国際ターミナル駅に初めて足を踏み入れたらどうなるか。経験を元に証言しよう。
まず、立ち尽くす。意図的に立ち止まるというより、感動の金縛りにあうような感覚である。乗降客が多い駅では障害物のようになることもある。
その金縛りが解けると、ハッと我に返り、広大な構内をキョロキョロと瞳を輝かせながら見回す。
日本と全く違うそのスケールと歴史の深さに、ただただ圧倒、圧巻されながら。
次に目を閉じる。そして嗅ぐ。駅の香りを。外国の駅は独特の匂いがする。(しいて例えるなら、古い木造建築物に漂う香りがそれに近いかも)
その馥郁(ふくいく)たる香りを、思いを馳せながら嗅ぐのである。
さらに耳を澄ます。駅独特の喧噪な雰囲気の中で流れる、フランス語のガイダンス放送、
TGVをはじめとする電気機関車の大きなアイドリング音、それに汽笛なんかが絶妙のコラボとなり交響曲を奏でれば、もうそれだけで涙がこぼれてしまう。
五感をフルに稼働させて感極まれば、吸い寄せられるように鉄道車両に近づく。どの車両もみたことがないものばかりである。
日本で、初めて導入される新車両を見る感覚とは全く違う、まるで異星の生命体に初めて遭遇したような感覚に襲われる。(ほんとだってば!)
衝動を抑えきれずに、鉄の質感を確かめるべく、車体に触る。このとき車体のペンキが塗り立てで、手にそのペンキがつこうものなら、
もう、ミラクルラッキーを通り越して、これは神のお御示しだとばかりに、着ている衣服にまでそのペンキをこ擦りつける・・
・・・・・・とこれ以上書けば、ただのあほに思われるおそれがあるので、このくらいでやめとくが、
それくらい、海外の国際ターミナル駅というのは、鉄(わたし)にとってディープインパクトな聖域であるのだ。


ひとしきり感動したら、一刻も早く鉄道に乗りたい衝動に駆られる。慌てて切符売り場を探す。あった!あそこだ!よし、切符を買うぞー!

わたし 「おばちゃん、わし、オランダ行きたいねん。タリスの予約してくれん?」
窓口のおばちゃん 「ここは在来線の切符売り場やし、タリスの予約はでけへんねん。(指をさして)あのどんつきの左側にある窓口行き」
わたし 「ありがとさん」

行けば長蛇の列。窓口はたくさんあるのに対応している職員は少ない。
どこかで体験したこの感じ・・そうだ・・ヘルシンキ空港の入国審査のようだ・・(汗)
まあ、今回はあのときほど時間に焦っているわけではない。はやる気持ちを抑え、平静を装って並ぶ。
それにしても列の進むのが遅い。遅すぎる!30分ほど並んでようやく窓口に着いた。

わたし 「わし、オランダ行って、ベルギー行きたいねん。タリスの予約してんか?」
窓口のねえちゃん 「は?」
わたし 「は?やないやん・・(汗)オランダ行きのタリスの予約頼むて、ゆってんねん。」
窓口のねえちゃん 「は?あんたの英語わからんし。」
わたし 「わし、めちゃくちゃわかりやすうゆうとるやんけ!タリス、わかるやろ?タリスでオランダ行きたいの!今すぐ出るタリスの切符ちょうだい!」
窓口のねえちゃん 「わっかりましぇーん♪(やる気なし)」
わたし 「ねえちゃん、わし、30分も並んでんねんで!もちっとなあ、こう、聞いたるゆう姿勢で接せれんのか!」
窓口のねえちゃん 「わっかりましぇーん♪」

ムッカアアアアアアアアアアアア・・!ときたところで、ふと横を見ると、となりの窓口のねえちゃんが手招きしている。
後ろに並んでる人にジェスチャーで謝って窓口を横に移動する。

わたし 「あんな、あのとなりのねーちゃんな、わしの注文、ちゃんときいてくれやがらへんねん・・」
窓口のねえちゃん 「はいはい。あたしがきいたげる。どこ行きたいん?」
わたし 「わし、オランダ行きたいねん。かっこいいタリスで。でな、わしユーレイルパスもっとうしな、割引でたのみたいねん。」
窓口のねえちゃん 「オランダのどこ行きたいん?」
わたし 「アムステルダム」
窓口のねえちゃん 「ちょっと待ちや・・カタカタカタ(キーボードをうつおと)アムステルダム行きのタリスは10時半発のが空いてるわ」
わたし 「10時半!?そんな時間までないの?」
窓口のねえちゃん 「ユーレイルパスの割引枠は座席数が少ないんよ。だからすぐに埋まるねんよ」
わたし 「そなんやあ・・しらなんだ。ほんなら、ベルギーのブリュッセルなら何時発のがある?」
窓口のねえちゃん 「ちょっと待ちや・・カタカタカタ・・ブリュッセルまでなら9時発のがあるわ」
わたし 「それでも9時発かあ・・時間あくなあ・・まあええわ。じゃあブリュッセルまでの予約お願いできる?」
窓口のねえちゃん 「はいはい。ブリュッセルまでパス使用ね。座席は1等車か2等車かどっちがいいの?1等ならごちそうがつくわよ。」
わたし 「そっち」
窓口のねえちゃん 「はいはい。1等車ね。帰りはどうするの?」
わたし 「あ・・帰りのこと忘れてた・・(爆)ブリュッセル発で、夕方から夜頃で何時のが空いとう?」
窓口のねえちゃん 「カタカタカタ・・ブリュッセル19時15分発が空いてるわよ。どう?」
わたし 「おおきに!それで帰る!ごちそうつきの1等車で!」
窓口のねえちゃん 「はいはい(笑)」



窓口のねえちゃん 「はい、ほんならこれ切符ね。いい?確認するわよ。(指をさして)この左上からね、10月4日、つまり今日、(指を右にずらす)
9時1分発、ここパリ北駅から、ベルギーのブリュッセルまでね、着くのは今日の10時23分、乗車時間は1時間半弱ね。座席は1等車。
タリスの列車番号は9317、間違えないでね。2号車の52番があなたの席よ。ユーレイルパス使用で、41ユーロ。これが行きの分。」

窓口のねえちゃん 「帰りは今日の19時15分ブリュッセル発、パリ北駅までね。ここに着くのは20時35分よ。同じく1等車でとったからね。
列車番号は9454、1号車の45番があなたの席。値段は同じく41ユーロね。で、往復あわせて82ユーロ。これでいいわよね?」

わたし 「おねえさん、神様やあ・・(T_T) わしのわけわからん英語でここまでちゃんとしてくれるなんて、ほんま神様やあ・・おおきにな。」
窓口のねえちゃん 「はいはい(笑) あんた、スリとかにあわんようにきーつけや(^^;)」
わたし 「おおきに、ほんまおおきに」



少し蛇足になるが、さいきん、わたしをよく知る人たちから、この回顧記に書かれた会話の内容について、次のような疑念の声があがっている。
『とおるちんが、あんなに英語を話せるわけがない!あのブログの会話内容はねつ造やろ?そうやんな?』
じつに、悪意に満ちた(笑)鋭い指摘ではある。
正直にゆうと、話は、おもしろおかしくするため、かなり盛っている(爆)。
けど、切符などを超悪戦苦闘しながら現地で買っているのは事実である。ひとり、五里霧中でヨーロッパを徘徊しているのもまた事実である。
この回顧記は、そのような厳然たる事実(笑)をふまえたうえで、「はじめてのおつかい」を見るような、あたたかく、かつおおらかな目でみていただきたい。
・・と都合よくおもうわたしであった (-_-;)




どうやら、まだタリスの到着ホームは決まってないみたいだ。(9317-BRUXELLES・MIDI)
そうなれば、目的はひとつ!駅に停車する列車を撮りまくるぞ〜!







構内で目を輝かせながらTHALYS(タリス)ほか国際列車を撮りまくる。
タリスはフランスからベルギー又はオランダを結ぶ国際列車で、TGVを原型とするワインレッドの鮮やかな車体が特徴的だ。


こちらがフランスが誇る超高速列車TGV。(モンサンミッシェルに行ったときに乗った列車と同系列)
並べてみるとそっくりなのが、よくおわかりいただけると思う。









欧州の電気機関車はめちゃくちゃ格好いい。わたしのような機関車&貨物列車大好き男には、こたえられない。

ほどなくして、フランス語のガイダンスが構内に流れ、駅にいる人たちが一斉に行先掲示板の下に集まった。
むろん、フランス語など全くわからないが、どうやら掲示板の内容が更新されたようだ・・くらいのことはわかる。
足を運ぶと、わたしが乗る予定の9317号の停車ホームが掲示されていた。いよいよ、乗車だ。
さっき苦労して買った切符を刻印機に差し込み、深呼吸をしてタリスに乗り込む。



落ち着いたワインレッドの配色で統一されたタリスの1等車内。
各座席にテーブルが配置されている。シートピッチはTGVよりさらに広く感じられた。
乗務員さんに恭しく迎えてもらい、わくわくしながらも、高級感漂う車内にどきどき、そわそわ・・とにかく落ち着かない。
そ・・そういや乗降口に新聞が置いてあったな・・昨日の凱旋門賞の記事が書いてあるかも!さっそく取りに行こう!



スポーツ紙っぽい新聞を数紙手に取り、座席に戻って紙面をめくる。
競馬の記事・・競馬の記事・・どの新聞も全く載っていない。。こちらでは、翌日記事になることはないのかな?
しょうがないので、サッカーの記事なんかをわからないなりに読む・・いや、読んでいるフリをする。
ふむふむ・・なるほど・・ふんふん・・なるほど・・
「なにがなるほどやねん!」・・と、だれも突っ込んでくれないので、すぐに飽きる。
読めない新聞をもらってもしょうがないので返しに行くか・・と席を立とうとしたとき、
ふと、車両入り口の自動ドアの上部にある電光掲示板に目がとまった。
THALYSNET FREE WIFI とテロップが流れている。
フリーのwifiが使えるのかな?Ipadを取り出し、wifi機能をonにしてみる。一瞬でつながった。
なんやろ?このタリスネットって・・ どうやらふつーの検索サイト(googleやyahoo)は見れないみたいやけど・・ま、いいや。あとで見よう。

そうこうしているうちに、車内アナウンスが流れ、タリスが出発した。
スーッと加速していく感じで、日本の新幹線よりも揺れが少ない。
モンサンミッシェルの往復で利用したTGVよりも静かで、明らかに速度も速い。
「すげー・・」子どものように車窓に釘付けになる。
新幹線のように高架を走るわけではないので、500系のぞみ以上にスピード感を感じる。
あ・・そういや、ipadつけっぱなしやったな・・スリープモードにしなきゃ・・
ん?んんんんんん!?!?



なにこれ!?リアルタイムで列車の速度が出てるやん!しかも、どこ走ってるかとかリアルタイムで表示されとうやん!
すごい!すごい!タリスすごすぎ!
そして、感動しているのもつかの間・・綺麗な乗務員のおねえさんがご馳走をもってきた。



機内食のようなご馳走ではあったが、テッチャンはこういうのが、嬉しくてたまらない。
電車で、自分の座席で、ご馳走を持ってきてもらって、車窓を眺めながらお料理を食べられる。これ以上の贅沢があるだろうか・・。
しかし、このお食事には、言葉にできない緊張感があるのも事実である。
・・というのも、わたしはこういう絶対こぼしちゃいけない食事のときに、ふつうでは考えられないアクシデントを(よく)発生させる男なのだ。
たとえば、上の写真を例に取ると、パンを取ろうとしてウオーターをこぼし、慌てふためいてヒザをガンと上にあげてテーブルをひっくり返し、
すべてのお食事を床に落とす可能性が非常に高い。
「そんな奴おらへんやろ・・」と思われるかもしれないが、わたしをよく知る人間だったらこういうだろう。「きみなら、ありえる。いや、きみなら、きっとそうなる!」と。
そんなわけで(どんなわけや)、わたしはまずカップの水を飲み干し、細心の注意を払いながら器をつかみ、汁物から順番に食べた。
あまりに慎重に食べてる様子がおかしかったのか、通路を挟んで隣に座っていたおばちゃんに思いっきり笑われてしまった。(-_-)
食事後、このおばちゃんとは仲良しになり、わたしが観光で来ている旨を伝えると、ベルギーの見どころをいろいろと教えてもらった。おばちゃんの情報はほんとうに役に立った。
なにがどう、いいほうに転ぶかわからないものである。



車窓眺めて、TARISNETをみて、ご馳走を食べて、おばちゃんと話して、BARに行って・・としているうちに、あっという間にベルギーのブリュッセル・ミディ(南)駅に到着。
車掌さんが検札に来たときも、パスポートの掲示は求められなかったので、いつ国境を越えたのかすらわからなかった。
さて、どこにいこうか・・。
トーマスクックの時刻表をパラパラとめくる。さっきおばちゃんが素晴らしいと教えてくれた水の都、ブルージュが近いな。よし、ブルージュに行ってみよう!(^o^)
・・と目的地が決まったのはいいが、駅がだだっ広く、ブルージュ行きの列車がどのホームから出るのかわからない。
ただアテもなく探していても埒があかないので、ホームから一旦離れ、中央改札のほうに行ってみる。



改札付近の電光掲示板と、トーマスクックの時刻表を照らし合わせて、ブルージュ方面に向かう列車がどのホームに止まるか調べる。
どうやら、OOSTENDE行きの在来線に乗れば、BRUGGEに行けるみたいだ。
在来線のみで移動する場合は、パスさえあればその都度切符を買う必要はない。



ホームに行くと、落書きだらけの列車が止まっていた(>_<)
まだ少し時間があるので、ホームを移動して列車を撮りまくることにする。







とてもおとこまえなベルギーの機関車。やはり機関車は独特のオーラがある。



ふと運転席を除くと、座っていたのは、どこにでもいそうなおばちゃんだった。
いいなあ。「うちのおかあちゃんは機関車の運転手やで!」とか子どもは言えるんだろうなあ・・

駅構内を撮影しながらウロウロしているうちに、ブルージュ行きの電車の出発時間が迫ってきた。
あわててホームに戻り、車両に乗り込む。平日の昼間なので座席はガラガラだ。
スーッと発進するタリスとは違い、ゴトン!と大きく揺れながら、ローカル車両が駅を出る。
ゴトンゴトン・・ゴトンゴトン・・この揺られる感じもいいなあ(^o^)

ゴトンゴトン・・ゴトンゴトン・・
ヨーロッパの鉄道では、日本のような丁寧な車内アナウンスが流れない。
だから、常にトーマスクックの時刻表と時刻を照らし合わせ、だいたいどのあたりを走ってるかを把握していないと、目的地で降り忘れてしまう。
いま乗っている列車は、OOSTENDE行きなので、Bruggeが終点ではない。
しかも、途中駅のGent Sint-Pieters発車時点で20分以上遅れている。こういうケースが一番厄介だ。
列車の速度が遅くなるたび、鞄を担いで乗降口に行き、到着した駅を確認する。(ホームにある青い駅名表示板を都度確認する)

ブリュッセル・ミディ(南)から、揺られること1時間半、ブルージュ(Brugge)らしき駅に到着した。
列車から降りて、駅周辺をキョロキョロ見回すが、運河が見あたらない。おかしいなあ・・水の都のはずなのに。ほんとにあっているのかなあ?(>_<)
駅員さんに再度聞いてここがブルージュで間違いないということを確認し、マルクト広場という場所に行けば、その近くに運河がある・・というようなことを教えてもらう。
駅周辺を徘徊し、バス乗り場を見つけ、なんたらCENTER行きと書かれたバスに乗ってみる。2ユーロだった。
乗って5分ほどで、いかにも広場っぽいところに着いた。ここがマルクト広場なのかなあ?



「おっちゃん、ここマルクト広場なん?」
「ちゃう。マルクト広場はこっからまっすぐ東にいったとこや。」
「お・・おおきに。(・・;)」



ベルギー・ブルージュの旧市街をマルクト広場に向かって、てくてく歩く。
はじめての国、はじめての街、はじめての道を歩くときのワクワク感は格別なものだ。
あの角を曲がるとどんな光景が広がっているのだろう・・(*^_^*)





バスを降りたところから、10分〜20分ほど歩いたところで、急に視界が広がり、”広場!”って感じのところに着いた。
間違いなくここがマルクト広場だろう。南側に聳え立つ鐘楼、東側にデーンと佇む市庁舎、北側にはメルヘンチックな家々が並んでいた。
マルクト広場の鐘楼(高さが83m)は13世紀に建てられたもので、15分おきに美しい鐘の音が街中に響き渡る。





なんてオシャレでかわいい建物なんだ・・。あまりの美しさに呆気にとられる。
(帰国後わかったのだが、これらの建物はギルドハウスといわれ、この地がヨーロッパの商業都市として栄えた象徴的建造物であるらしい)
歩きながらまわりをキョロキョロキョロキョロ・・おっと・・



“ヒヒーン!” 嘶きとともに、背後から馬車が現れた。



広場で待機している馬車のお馬さんに近づいてみる。とてもおとなしい仔だ。
餌をあげるわけにはいかないので、鼻筋をなでなでしてみる。




広場をウロウロするのだが、運河が見つからない。
運河に拘らなくてもブルージュ散策はできるのだが、どうしても運河を見てみたい。
彷徨いていても埒があかないので、通りすがりのにいちゃんに聞いてみる。

わたし 「おにいさんおにいさん、わし、運河探しとうんやけど、どこかしってはる?」
にーちゃん 「運河?riverのこと?船乗りたいん?」
わたし 「船なんてのれるん?のれるんなら、のりたい。」
にーちゃん 「その見えとうごっつい鐘楼くぐった先に乗り場があるで」
わたし 「おおきに!ありがとさん」

あの鐘楼をくぐれば、運河が見える。そして船にも乗れる!胸ワクワクで足早に駆ける。



鐘楼をくぐり抜けると・・あった!運河だ!船もいる!
おおお!みんな乗ってるやん!おいらも乗りたい!乗り場はどこだどこだ?

船・・というか、ボートの乗り場はすぐに見つかった。
さっそく切符売りのおっちゃんに話しかける。

わたし 「おっちゃん、わし、これ乗りたい!超のりたい!どないしたら乗れるん?」
おっちゃん 「どないしたら・・って、金はろたらふつうに乗れるがな。」
わたし 「なんぼ?なんぼ?」
おっちゃん 「6.9ユーロ」
わたし 「やすっ!のるのる!」
おっちゃん 「おおきに。ありがとさん」



運転席のすぐ後ろに乗り込み、わくわくわくわく・・
田舎の遊園地のジェットコースターと同じで、定員が集まるまでボートは出ない。
それでもあっという間にボートは満席になった。何隻もの船がピストンでまわっていた。



出発進行〜♪ゆっくりとボートが波止場を出ると、地元の学生が手を振って送り出してくれた(*^^*)
カメラを向けると、どの子もみんな屈託のない笑顔で手を振ってくれる。
旅でいちばん嬉しいのはこういう瞬間に出逢えることだ。子どものスマイルほど見ていて清々しいものはない。



街全体が”天井のない美術館”といわれるブルージュの運河をボートでまわる。
どこをどう切りとっても絵になるのが凄い。これは悔しいが地元京都でも考えられないことだ。
溜息が漏れるほどの美しさ・・その魅力をお伝えできるかわからないが、ボートから眺めたブルージュの街をご覧いただきたい。
















”ブルージュ”とは「橋」という意味で、その名の通り、この街には幾つもの魅力的な橋が点在する。
それらの橋をボートでくぐり抜けるとき、運が良ければ地元のこどもたちと出逢うことができる(*^^*)













ブルージュの中心部はそんなに広くないのだが、ボートはゆっくりと時間をかけて街全体をまわってくれる。
ボートの運転手さんが、(たぶん)ドイツ語で丁寧に説明してくれるのだが、さっぱりわからない。
それでも一生懸命説明してくれるので、相槌をうちながら耳を傾ける。乗船時間は40分ほど。6.9ユーロは実に安かった。



運河巡りでブルージュを満喫したこともあって、また違う街に行ってみたくなった。
時計を見ると時間は3時すぎ。帰りのタリスはブリュッセル19時15分発だから・・よし、まだ何カ所かまわれるな。とりあえず駅に行ってみよう。
鐘楼をくぐり抜け、マルクト広場へ戻り、来た道を逆に辿る。途中でバス停があったので、行き先を確認し、バスに乗り込む。
バスは10分足らずでブルージュ駅に到着。駅の掲示板を見ると、アントワープ行きの列車がもうすぐ発車するみたいだ。
慌ててトーマスクックの時刻表を開ける。うむ。BruggeからAntwerpen Centraalまでは1時間20分ほどで、
そこからBrussels Centralまでは20分で行けるからまわれるな・・。よし、乗ってみるか。
あまり後先考えずにアントワープ行きの列車に乗り込む。・・とそのまえに・・



ブルージュ駅構内にあったワッフル屋さんで本場ワッフルを購入(^_^;)
これを列車で食べよっと♪ (とても美味しかった)

列車は定刻すぎにブルージュを発車し、ゴトンゴトン・・というか、ちんたらちんたら・・というか、のんびりゆったり、とにかく遅れる遅れる。
Bruggeから40q離れたGent Sint-Pietersに着いた時点で既に15分の遅れ、さらに、Lokeren、Sint-Niklaasと駅に着くたびに遅延時間が広がっていく。
『一体この国はダイヤとゆうものをなんと考えてるんや・・そもそも時間を守ろうっちゅう気があんのかいな?』
イライラしながらトーマスクックの時刻表と現在地とを照らし合わせる。
こんなことは日常茶飯事なのか、他の乗客はイライラしている素振りすらない。みなさん、とてもおおらかだ。おいらも見習わなくっちゃ・・(^_^;)
結局アントワープには30分ほど遅れて着いた。



時間は5時前(>_<) もともと余裕・・というか、計画性のカケラもない”いきあたりばっ旅”なので、少し列車が遅れたりすると慌てふためいてしまう。
『中途半端にアントワープとブリュッセルの両方をまわるよりも、また列車が遅れることを見越してブリュッセル観光一本に絞った方がいいな・・。』
というわけで、結局、アントワープは駅に立ち寄るだけに(^_^;)。ただ、せっかく来たのでこの立派な駅舎をパシャリ。



案の定、ブリュッセル行きの列車も遅れ、ブリュッセルに着いたのは17時半すぎ。
あんまり時間がない。昼が長いヨーロッパとはいえ、日もだいぶ傾いてきた。
駅で案内カタログのような冊子を手に入れ、地図のページを開けて一目散にグラン=プラスへ。



『うわー!なんちゅう絢爛豪華な広場やねん!』
中央駅の出口を左手の方に進み、すぐの階段を降りると、「どやっ!」といわんばかりの空間が広がっていた。
グラン=プラス・・世界で最も美しいといわれている広場・・
全体を撮ろうにも、わたしの24mmのレンズでは建物上部が映しきれずに切れてしまう。
ルーブル美術館で見た絵画がそのままリアルに3Dで飛び出してきたような感覚だ。一体なんなんだここは・・。
ブルージュのマルクト広場も土肝を抜かれたが、グランプラスもまた違う意味で土肝を抜かれた。



コンパクトデジカメのパノラマ機能で広場全体を写してみる。画角は一眼よりも広いが、それでも上部は写しきれない。







『しまった・・シグマの12-24mmの超広角レンズを持ってくるべきだった・・』
と悔やんでしまうほど、グラン=プラスは広かった。広場の先に小道があり、なにやら店が並んでいるふうなのでふらーっと足を運んでみる。



少し小道を進んだところに姉(8歳年下)好みのシャレオツなお店があった。
『そ・・そういや、姉におみやげをなんも買ってなかったな。手ぶらで帰ったら叱られるだろうな・・ここでなんか買っていくか・・(^_^;)』

「ごめんくださーい・・」
男ひとりで入りにくい雰囲気の店だが、姉に叱られるよりマシだ。勇気を振り絞って店内に入ってみる。
店に入ると、姉の好きそうなものがワンサカ置いてあった。いったいどれを買えばいいのだろう・・









どれを買えばいちばん無難かわからなかったので、店のおねえさんに聞いてみた。

わたし 「すんまへん。わし、8才年下の姉がおるんやけど、お土産買ってこな、超しかられるんやけど、なに買ったらええおもう?」
ねーちゃん 「8歳下やったら、妹ちゃうん?」
わたし 「わしより超しっかりしとるし、小学生のときから姉や姉やゆわれてるし、姉やねん。そんなことはどうでもええねん。どれかったらええ?」
ねーちゃん 「これなんかどう?高いけど。」
わたし 「おねえさん、なんもわかってへんな。わし、なんでおねえさんに聞いてると思う?」
ねーちゃん 「さっぱりわからん。」
わたし 「わし、やすもん買いたいんやけど、やすもん買ったらしかられるおそれがあるから、それでおねえさんにお墨付きのやすもんをきいてるねん。」
ねーちゃん 「あんたがケチで姉には頭があがらんゆうことはよくわかった。ほんならこれなんかどう?安いけどかわいいで」
わたし 「おねえさん、最高!わし、そうゆう答えをまっててん。店のおねえさん大絶賛ゆうて、これ渡すわ♪」

最高のかたちで、姉にお土産を買うことができた。もうグラン=プラスに思い残すことはない。
ふと時計を見れば、18時をまわっていた。タリスの発車時間までにはまだ少し余裕があるが、
このグラン=プラスのあるブリュッセル中央駅から、タリスの発着駅であるブリュッセルミディ駅までは、大阪駅から新大阪駅くらい離れている。
とりあえず、新大阪にあたるBrussels Midiに戻らなくてはタリスに乗ることができない。
『やばっ!急がなきゃ!』足早にグラン=プラスを後にして、Brussels Central駅に向かう。







駅の近くでおにいさんとおねえさんが見たことがない楽器で路上ライブをしていた。
急いでいても、こういうときは、ついつい立ち止まって聴き入ってしまう(^_^;)



Brussels Central駅からBrussels Midiまでは在来線で3分。電車は10分おきにくるので、そんなに焦る必要もなかった(^_^;)
結局タリスには余裕をもって乗車することができた。
ご馳走をいただいたあと、トーマスクックの時刻表を開け、明日の予定を立てる。
明日はTGVで、世界遺産のポン・デュ・ガールに行こう!出発駅はリヨン駅だな。TGVの始発は6時15分か・・5時には起きなくちゃならないな。
あれこれ思案しているうちに、あっという間に、”ご乗車ありがとうございました”的なアナウンスが流れ、車窓に目を向けるとパリの夜景が広がっていた。

タリスは遅れることなく20時35分にパリ北駅に到着。
あたりは既に真っ暗だったが、人通りは朝よりずっと多く、RERに乗るのが大変だった。
denfert rochereauで降り、ホテルに着いた頃は22時前・・。明日は5時起床なのに、だいじょうぶかいな・・(^_^;)
疲れきった体にサッとシャワーを浴びせ、カメラのリチウム電池とipad等を充電セットして、そのままベッドでバタンキュー・・
ほんま、だいじょうぶかいな?(^_^;)


7日目へつづく





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