4日目


ぴぴぴぴぴぴぴ・・この日も目覚ましがうるさい。
う・・ううう・・・いま何時やねん?まだ5時やん・・人間が起きる時間やないやん・・
いつもだったらアラームを止めて二度寝・・のパターンだが、そうも言ってられない。
こんな時間に目覚ましをセットしたのには理由がある。
昨晩、トーマスクックの時刻表(※)で調べた、モンパルナスからシャルトル方面へ行く普通列車の始発時刻が6時18分だったのだ。


※ ここでヨーロッパひとり旅の必需品、トーマスクックの時刻表について少し触れておきます。

トーマスクックとは、ヨーロッパのほぼ全域をカバーする時刻表のことで、
さすがに、全欧全てのダイヤが記載されているわけではないのですが(そんなことをすれば軽く千ページを超えてしまいます)
個人でヨーロッパを巡る際に、旅行者が必要とするダイヤ(鉄道・バス・船舶)は、ほぼ網羅されています。
ヨーロッパの鉄道は、@日祝日を除く毎日動いたる A祝日を除く月〜金は動いたる B土曜を除く毎日動いたる C土日祝日のみしか動いたらへん
D日祝日のみしか動いたらへん E特定の曜日しか動いたらへん ・・などとめちゃくちゃ細かく分けられています。
その超ややこしい規定を記号を使って簡潔に記載されているのが、この時刻表なのです。
最初はたしかに、どこになにが記載されているのかすらわかりづらいです。
しかし、読み慣れると、これほど合理的でわかりやすく記載されている時刻表はありません。
もし、これからひとりで海外(ヨーロッパ)をまわってみたいと考えておられる方がいれば、この時刻表は非常に重宝するので
できれば旅行出発1ヶ月まえに購入し、その読み方をある程度マスターされてから旅に出られることをおすすめします。


↑トーマスクックの時刻表


寝ぼけながら、一晩かけて充電したリチウム電池をカメラにセットし、鞄に入れる。
あと、レンズと時刻表・・三脚はまあええわ。どうせ使えへんやろし・・。
サッとシャワーを浴びたらもう6時前。やばっ!時間ないやん!
フロントに今日も朝食は食べない旨を伝え、足早にモンパルナス駅に向かう。

今日は土曜日とあって、駅構内も一昨日と違って閑散としている。
シャルトル行きの列車は、えーっとどのホームから出るねん?
案内板を見るといちばん端のホームだった。時間がないので(列車を撮影する間もなく)、急いで乗り込む。
車両はガラガラ。乗客はわたしひとりだった。



近郊区間の在来線の車両にもclass1とclass2が混在しており、class1はテーブルと電源(ハンガーの下)が
一座席に着きひとつ備えられている。携帯電話の充電なんかも簡単にできる。(日本製品はアダプターが必要)





7時26分、定刻通りシャルトルに到着。パリからは1時間ちょいだった。
まだ夜が明けておらず、あたりは真っ暗。
明かり越しにぼんやり見えるシャルトル大聖堂に向かって、売店で買ったクロワッサンをかじりながら、てくてく歩く。



だーれもいない街をてくてく散歩。なんやゾクゾクするなあ(>▽<)





駅から徒歩10分ほどで大聖堂に到着。だけどまだ真っ暗・・どうしよう・・ん?向こうのほうでなんかやってるぞ?



近づいてみると朝市が開かれていた。
ラッキー♪こういう庶民的な市場をいちばん見て回りたかったんよ(^^)




さらに奥に進むと、食料品が売られていた。
わたしが珍しかったのか、露店のおっちゃんたちが次々と声をかけてくる。

おっちゃんA 「にいちゃん、どっからきてん?」
わたし 「パリや。大聖堂見にきてんけど、ちょっと早ように来すぎたわ。」
おっちゃんA 「ちゃうがな。どこの国からきたかって、聞いてんねん。」
わたし 「あ・・日本や日本。おとついから来とうねん」
おっちゃんB 「どや?ジャポンのにいちゃん、このハム買ってかへんか?うまいで〜!」
わたし 「ええなあ。ほしいけど、あんまわし金ないねん。ごめんな。」
おっちゃんA 「にいちゃん、そっちの店で買うたらあかん。こっちにしとき。」
おっちゃんB 「あかんあかん!こっちやこっち。見てみ、モノが違うがな。」
おっちゃんC  「いちばん安いのはわしとこや。迷ったらこっちおいで」
わたし 「わし、金ないゆうてるやん(^^;)」

商魂たくましいのはどこの国も同じ。
市場には肉類、野菜類、鮮魚、果物・・あらゆる品が揃っていた。
それらを見て回るだけですごく楽しい。コンデジと一眼で写真を撮り分けながら、市場を練り歩く。













おっちゃんおばちゃんたちと話しながらゆっくり回っていると、あっという間に夜が明けた。
なにを買おうか迷ったが、すぐに食べられる食品が少なかったことと、
どこかの店でなにかを買ったら角が立つような気がして(笑)
結局なにも買わなかった。



大聖堂に戻るも、門は固く閉ざされている。
建物が大きすぎてわたしのカメラの画角には収まらない。
路地を後退りし、壁に背中をつけるようにしてパシャリ。


よく見ると、横の通用門というか勝手口のような扉が半分開いている。
こ・・ここから入れるのかな?




ご・・ごめんくださーい。おじゃましまーす。。
しーーーーーーーん。誰もいない。
い・・いいのかな?勝手に入っちゃって。お金も払ってないけど(汗)。
それにしても、なんて綺麗なステンドグラスなんだ・・。











うう・・なんで三脚持ってこんかったんやろ(>_<)まさかこんな誰もいない状態で大聖堂の中が撮れるとは思わなんだ。。
モンサンミッシェルのときみたく、とりあえず安定した地面や椅子の上にカメラを置き、レンズの下にフードをかまして構図を決め、レリーズで撮る。
黒(暗部)を締めないとステンドグラスの美しさが霞むので2段くらいアンダーで撮るのだが、光量が少ないので、F4でもシャッター速度は3秒弱。
建物内なので無風ではあるものの、フードの縦置きでは石をかますよりも安定感に欠けるので、とにかく数を撮りまくる。
もちろんピントはマニュアルであわせる。こんな状況ではAFはあてにならない。
終いには、地面に這いつくばって、寝転びながらピントを調節しもって撮影することになった。
あとから入って来た観光客が異様なものを見る目でわたしを見ていたが、撮影の邪魔さえされなかったら、どう見られようが全く気にならなかった。



大聖堂の正面玄関は大規模な修理をしており、ご覧の有様だったが、中のステンドグラスを撮影できただけでも、シャルトルに来た価値はじゅうぶんにあった。
さあ、ロンシャン競馬場に行こう!
久々に会える日本のともだち!うれしいな〜日本語が喋れるぞ〜♪



帰り道。朝歩いたときは暗くてようわからんかったけど、こんなとこ歩いてたんか・・
市庁舎の時計を見ると、9時40分。あっという間だったけど、2時間くらいはいたんやなあ・・。





シャルトル駅に戻る途中に寄ったパン屋さん。
ショーウインドーに並ぶスイーツのどれもこれもが、めちゃめちゃおいしそう。
店の名前は覚えていないが、ここで買ったミルフィーユは最高においしかった(*^_^*)




シャルトル発(10:05)の普通列車でモンパルナス(10:34)に戻る。
この路線はVersailes Chantiers(ヴェルサイユ宮殿)も経由するので、観光客とみられる乗客が結構多い。
ヴェルサイユ宮殿にも寄ってみたいな・・という気持ちはあったが、ここで寄り道するとあとの予定がすべて狂ってしまうので、
今回は諦めることにした。 ま、今度来たときに行けばいいや。少しは次きたときの楽しみもとっとかないと(*^_^*)
と、そのとき、友人のMさんからメールが届いた。もう競馬場についてるとのこと。”1時間以上前から開門まち♪”と、かわいらしい顔文字が添えてある。
すごい・・気合い入りすぎ・・ おいらも早くいかなきゃ。。あわてて返信をする。

わたしのメール 「いまシャルトルからモンパルナスに向かう列車の中です。メトロ乗り継いであと一時間半はかかるかな?メトロはどこがいちばん近いですか?」
Mさんのメール 「メトロ1号線 ポルトマリオット Porte Maloot 244バスに乗りブローニの森を抜けたバス停で降りてください」

”ありがとうございます”と返信し、地図を開ける。Porte Marlootは凱旋門より少し西に行ったところで、なるほど。ここからバスに乗るのか・・
乗り継ぎルートを調べてるところで、まもなくモンパルナスに着くとのアナウンス。あわててバッグを肩からかつぎ、列車の乗降口へ。
ホームに着くなり小走りで地下に降り、13号線ホームへ向かう。1号線への乗り換えまでは、ルーブルへの行き方と同じ。
今回はすんなり Porte Malootまで来ることができた。昨日迷ってよかったあ・・となんだかよくわからない安堵。
しかし・・
Porte Maloot駅から地上に降りた瞬間、またわたしの体内方位磁石が全速でぐるぐる回り出した。
えっと、どこだどこだ・・ここはどこだ・・北はどっちだ? バスはどこだ・・あった!バス停だ!あれだ、あのバスだ!
よく確認しないままバスに乗り込む。
あれほどまりもさんが、244バスって教えてくれたのに・・
バスはまっすぐに南へ。
バスに乗り込んでから、なんだかおかしいなと思い出し、系統路線図を見た。おや?森を抜けないぞ?
このバスは何番だ?ああああああああ!244ぢゃない!!(おい)

どうしよう。。とりあえず、聞いてみよう。となりのにいちゃんに。

わたし 「ぱーどん?にいさんごめん、ちょっときいてかまへん?わし、ロンシャン競馬場いきたいねんけど、間違ってこのバスのってしもてん。どこで降りたらええ?」
にいちゃん 「ちょっと地図見せてーな。あんたの英語、ようわからんし。あー、ここいきたいん?ほんならOCDEで降りて、ブローニュの森歩いて横断するしかないわ」
わたし 「おおきに!」
にいちゃん 「おれもそこで降りるし、途中までついていったる。」
わたし 「ほんま?ありがとさん!めっちゃたすかるわ」

にいちゃんはバス停で降りてからも、森を横断する道順を丁寧に教えてくれた。
ありがとうありがとうと何度もお礼を言って、握手で別れる。
OCDEからロンシャン競馬場までブローニュの森を横断するのは結構な距離ではあったが、
パリの人情に触れたことと、森の中に充満する空気があまりに美味しかったので、実に気持ちよくロンシャンに向かうことができた。
小1時間くらい森を歩くと、ロンシャン競馬場が見えてきた。なんて綺麗な競馬場なんだ・・





パリのセーヌ川沿い、ブローニュの森の中にあるHippodrome de Longchamp (ロンシャン競馬場)は、世界でいちばん美しい競馬場と言われる。(wikipedia引用)
どこがどう(部分的に)美しいというのではなく、どこをどう切りとっても美しいのだ。
写真を撮影していても、バックがうるさく感じられたり、あの障害物が邪魔だなと思うことはほとんどない。これは日本では考えられないことだ。





















わたしが到着したのは昼過ぎで、既に1レースは始まっていたが、場内の人はまばらで、すぐに友人のMさんとSさんを見つけることができた。
いつも日本の競馬場で会う友達とこんなところで再開できるなんて・・なんだかちょっぴり感慨深い。
「わざわざこんなところまで来て競馬するって、おたがいホント、頭のネジの栓が数本抜けてるよね〜」と冗談になってない冗談を交わしながら
3人の足は自然と馬券売り場の方へ。
「びっくりしたんだけどさー、日本語で馬券が買える窓口があるんだよ。窓口のおばちゃんが日本語をしゃべってくれんの!」と、Mさんが言う。
そんなあほな・・ほんまかいな・・?と思ったら、本当だった。日の丸の国旗のシールが貼られた窓口には、とても日本語の上手なフランス人のおばちゃんがいた。
「○レース、馬連で○ー○、いくら」という買い方がふつうにできる。
おばちゃんは愛想がよくとても親切で、「指定席はあるの?」とか「前売りはしてるの?」などなどの質問にもとても丁寧に答えてくれた。

明日に控えた凱旋門賞、どの場所を確保して写真をとるか、MさんSさんと入念に打ち合わせ。
「日本馬が1着でゴールした瞬間と、ガッツポーズが撮りたいので、ややゴール板を過ぎたあたりで撮りませんか?」という提案を受け入れてもらって、だいたいの場所が決まる。
場所が決まれば、開門直後を想定したルート確認。入場門からこう入って、ここを通って・・と、何度も行き来して最短コースを確かめる。
・・と、そのときである。場内の、とあるクレープ屋さんで働いている美女に3人の視線が釘付けになった。
お互い顔を見合わす。
「く・・くれーぷでも食べようか」
「そうだな。ぼくも、とてもくれーぷがほしかったところだ。」
「なんだきみたちもか、ぼくもくれーぷが食べたくてしょうがなかったところなんだ。」
アイコンタクトで瞬時に語ったわれわれは、無言でその美女のまえに並んだ。

「May I take your photo?(あんたの写真とってもかまへん?)」
あまりに可愛かったので、おもわず声をかける。女の子は恥ずかしい素振りを見せながらも控えめにOKと言ってくれた。
なんてかわいいんだ。男心を擽る対応もまた完璧である。
女の子は同じ露店で働く母親らしき人と屈託のない笑顔で写ってくれた。
我々は紳士の笑顔で礼を言い、スキップでスタンドに戻る。
やったやった!見せてくれー!おれにもくれー!って言いながらプレビューを見ると・・
ピンボケ・・(爆)
「ばかばか!とおるちんのばか!(T_T) なんでこんな肝心なときにぴんぼけなんだよおお!」
「き・・きんちょーして、オートフォーカス入れ忘れてた・・(爆)」

も・・もう一回行こう。。
懲りずに3人でまたクレープ屋へ。
「かんにん!おねえさん!もっかい撮らせて」と拝むと、OKの2つ返事。なんていい子なんだ。。
しかも、わたしがカメラを向けると、一緒に写ろうよという。わたしはカメラを写す側だし、シャイなSさんは遠慮がち・・
結局、Mさんとツーショットで写ってくれた。Mさんは感涙状態である。
このあと、Mさんは完全にこの女の子に恋に落ち、さらに翌日までロマンスは続くのであるが・・その顛末は3人だけのヒミツである(*^_^*)

もとい、今回、MさんとSさんの3人で撮影&場所取りができたことは心強かったし、いろんな意味で助けられた。
ひとり旅が好きなわたしだが、ロンシャンでワイワイあほなことを言いもって友人と過ごした2日間は、ほんとうに楽しかった。
競馬観戦とロンシャン独特の雰囲気を楽しんだ我々は、このあとパリに戻り、凱旋門を少し見学したあと、
凱旋門からワグラム通りを少し北東に入ったテルヌ(terne)広場にあるHippopotamusというファミレスのような店でステーキを食べた。まあまあ、美味しかった。
明日の夜は凱旋門賞でガッツリ儲けたお金でフランス料理を食べに行きましょうと約束し、2人とmetoroの駅で別れる。
そのあとちょこっとセーヌ川沿いのエッフェル塔の夜景を撮影し、カンパニールホテルに戻った。
明日は、いよいよ凱旋門賞・・日本馬頑張ってくれよ〜〜!と願いつつ就寝。




5日目につづく




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