2日目



”ぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴ・・”
やっかましいなあ・・こっちは疲れてんねん・・ ん??ああああああああああああ!! もう5時やん!?えらいこっちゃ!
2日目、朝5時に腕時計のアラームで飛び起きる。
慌ててカバンにカメラ・レンズ×2・三脚・トーマスクックの時刻表・バウチャー等をつめこみ、大急ぎでフロントへ。

わたし 「おはようさん!ちょっと明日の夕方まで、モンサンミッシェル行ってくるわ。ごめんやけど、ちょっと腰据えて撮影したいし、今晩帰ってこれんわ。」
ホテルのおにいさん 「今晩帰ってこうへんの?荷物とかどうしといたらええん?」
わたし 「そのままでええよ。帰ってこうへんだけやし。スーツケースとかそのまま置いてあるし。」
ホテルのおにいさん 「りょーかい。楽しんできーや。朝飯くっていかんの?」
わたし 「うん。ごめんやけど時間ないねん。おおきに。ありがとさん!」

カメラバッグを肩から下げて、ホテルを飛び出し、小走りでモンパルナスの駅に向かう。
カンパニールからモンパルナスの駅(SNCF)までは、走れば10分くらいで行ける距離だ。
あたりはまだ真っ暗。前方にはモンパルナスタワーが摩天楼のようにそびえ立つ。
人通りはほとんどないが、14区のあたりはそれほど治安が悪くない。
女性の場合はお勧めしないが、男だったら、深夜や早朝ひとりで歩いてても、さほどこわくはない場所だ。
モンパルナス警察署の前をとおりぬけ、地下鉄gate駅を通りすぎれば、すぐに左前方にモンパルナス駅が見えてくる。
やばい。もう6時近い。トーマスクックで調べた始発のTGVに間に合わんやん・・






フランスの列車は、直前になるまで、どこ行きの列車がどのホームに着くか決まっていない。
また、けっこうストが多く、時刻表に記載されている列車が必ずしも動くとは限らない。
ストだけはごかんべん。。そんな気持ちでおそるおそる案内板を眺めると、ホッ・・(^。^;) どうやら、ちゃんと動いてるよう。
わたしが乗りたいのは西大西洋線RENNES行きのTGV。なーんだ、まだ少し時間あるやん(^_^;)
しかし、ずらーーーーと並んでるTGVのどれが、RENNNES行きになるのかはまだ決まっていない(上の写真の案内板に表示されている”vole”を参照する)。
しょうがないので、切符を検札機に挿入し、刻印する。
フランスの鉄道の駅には改札がないので、自由に電車にのることができてしまうが、
自分で切符に刻印しないと、おそろしい罰金が科せられてしまうのだ。



刻印のやり方はいたってかんたん。そこらじゅうにあるこの機械に、切符を差し込むだけである。
けど、長細ーい切符の端がよれたりちょっとでも湿っているとエラーがでまくってなかなか刻印できない。
コカコーラの自動販売機で、ヨレヨレの札を何度入れても戻ってくるのと同じである。けっこうイライラする。




まだRENNNE行きの列車がどれかわからないので、瞳を輝かしながらTGVを激写激写♪すると・・

駅員のおっさん 「ニーハオ!にいちゃん。あんたこれから、もしかしてスペイン行くんか?」
わたし 「ニーハオゆうな、おっさん。わし、日本人や。わし、これからモンサンミッシェルいくねん。なんで?」
駅員のおっさん 「そうかすまんすまん。いや、あんた、駅で写真撮りまくってるけど、スペインはテロ対策でめちゃめちゃうるさいから、駅で写真とか撮ったらごっつ叱られるで」
わたし 「そなんやあ。ええこと教えてくれておっちゃんおおきに。フランスでもあんま駅で電車撮るのは、ようないんかなあ?」
駅員のおっちゃん 「ここ(フランス)はかまへんよ。そんなうるさい奴おらへんし。ただ、人によるしきーつけや。」
わたし 「うん。ありがと。おっちゃん、ええ人やな。ありがとうな。」
駅員のおっちゃん 「ほな、きーつけや。ザイジェン(再見)!」
わたし 「わし、日本人やてゆうとるやんけ(笑)」

そのあとすぐに、RENNNE行きTGV8001号の発車ホームが告知され、喜び勇んで列車に飛び乗る。
全席指定席。切符の見方は一見ややこしいが覚えればカンタン。わたしの席は3号車の44番だ。



TGVの座席(class1)は、飛行機のビジネスクラスのような広いシートピッチと、それぞれの席にテーブル、AC電源が備え付けられている。
しまった!ipadも持ってくればよかった(パリのホテルにおいてきた)・・。まあいいや。とりあえず、腹減ってるし、BARに行こ。


昔の新幹線にあったビュッフェのようなBAR。こういう車両は大好き。旅が楽しくなるから。



わたし 「すんませーん。朝ご飯食べにきたんやけど、ちょっと安価でおすすめのメニューとかある?」
BARのにいちゃん 「おお!ほんならこのboeufcamarがリーズナブルでおすすめや。」
わたし 「boeufcamarゆわれても想像すらつかんなあ・・まあええわ。それちょうだい。あとりんごジュースもつけて。いくら?」
BARのにいちゃん 「8.50EURと3.00EURで11.50EURね。メルシー♪」
わたし 「おおきに。ごっつうまそうやん(^o^)」



量はお世辞にも多いとはいえなかったが、味はまあまあおいしかった。日本で近いのは”肉じゃが”かな?
ホクホクのジャガイモの上に、ソースのかかった肉がのっかっている。なにより、列車の中で揺られながらの食事がいい。
ゆっくり食事をとっているとルマンに着いた。もうちょっとでレンヌだ。




レンヌ(rennne)に到着。乗ってきた列車を撮るのは鉄の基本。急げ!バスの時間までもうないぞ!



rennnee駅を駆け抜ける。nord(北口)からバスが出てるとガイドブックに書いてあった。どっちだどっちだ?



レンヌ駅北口を降りたところ。ここから右手のほうにいったところにバスターミナルがあり、そこからモンサンミッシェル行きのバスが出ていた。




レンヌからモンサンミッシェルまではバスで1時間20分ほど。けっこうかかる。
とくにすることがないので、電池の残量を若干気にしつつ車窓を撮影。


バス内から撮影してるので、いろんな影が映り込んでます。


パリから出発して4時間・・ようやく憧れのモンサンミッシェルが見えてきた。(バスの中から撮影)
す・・すげえ・・・・・・・・・・・・・(感嘆の溜息)



バスはモンサンミッシェルの前哨門のまん前で停車。
乗車していた人たちは皆、感嘆しながら前哨門をくぐっていく。しかしわたしは、その反対方向に駆けだした。
どうしても、どうしても、この美しすぎるモンサンの外観をまず、ちゃんと撮影したくてしょうがなかったからだ。
土手の下まで降り、ジュクジュクで泥だらけの芝の上を、革靴で駆ける。



修道院から響き渡る鐘の音、そして潮の香り・・。
振り返ってパシャッ。振り返ってパシャッ。ああ、なんて美しいんだ・・。なんなんだ。ここは・・。



湾に映りこむモンサンミッシェルがあまりにも美しかったので、湾の限界近くまで降りる。
泥が深い。とても深い。一歩一歩、足を泥から引き抜くように歩く。そのときである。
ああああああああああああああああああああ!!
靴が脱げた。しかも、カメラだけは守らねば・・と、バランスを崩して膝から泥に嵌る。
のああああああああああああああああああああああ!!
ジーパンは泥だらけ。靴の脱げた片足も泥の沼に。革靴は後方に置かれたまま。
え・・えらいこっちゃ・・。慌てて靴のところにドロドロの足を戻し、這うように土手の上へ・・
ど・・どないしょ。。どないしょ。。こんな状態でモンサンミッシェルに入れない・・。ホテルのチェックインもできるわけない。。
とりあえず、ジーパンの泥をカバンに入れてたティッシュで拭き取りまくる。
泥なのに、意外とすんなり取れる。おお・・これならなんとか・・
靴も泥だらけだったが、鞄の底にクッションが代わりに詰め込んでいたポケットティッシュで泥を拭きまくると、泥はある程度取れた。
しかし、この撮影時、わたしはパリのホテルでとんでもないミスを犯していたことに気づく。
早朝、あわてて三脚を入れた際、シューを入れ忘れていたのだ。
はっきり言って、シューがなければ、三脚なんてなんの役にも立たない。カメラが固定できないのだから。
私が本当に撮りたいのは、夕暮れと夜、そして早朝のモンサンミッシェルだ。
自分がイメージする写真を撮るには、どうしても、どうしても、カメラを固定させる三脚が不可欠である。
いったいどうすればいいのか・・頭を悩ませながら、前哨門をくぐる。



今回はオプショナルツアーとかではなく、完全に個人でふらっと行ったので、
ちゃんとしたガイドさんもいるわけがなく、回想記でも正直言って、写真についての正確な説明ができません(^_^;)
その手の詳しく正確な説明は、ほかのモンサンミッシェルについて書かれたサイトでご覧いただき、(おい)
とりあえず写真をご覧になって、モンサンの雰囲気をお感じとりくださいませ・・(汗)
尚、後日、モンサンについて詳しく書かれた本の購入を予定しておりますので、それらを読んだ後、
また詳細な説明を添えて更新できればいいな・・と思っております。



モンサンミッシェルと言えば、プラールおばさんのオムレツ。許可をいただき写真を撮らせてもらう。感謝!


































モンサンミッシェルの中をひととおり見学して外に出たら、ちょうど前哨門のまえにホテル方面に行く地元の路線バスが止まっていた。
運転手さんにメルキュールホテルまでの料金を聞き、たしか1.20EUR(だったと思うのだが)、直接支払いのっけてもらう。
モンサンミッシェルからメルキュールホテルまでの距離は3qくらい。停留所はホテルのまん前にあった。
しかし、バスは2〜3時間に一本しか出ておらず、便がいいのかわるいのかわからない(^_^;)
どうやら私のように鉄道と路線バスを乗り継いでくる人は少ないようで、本来ここは観光バスかマイカーで来る場所みたいだ。

バスを降りてふと振り返ると、降りたバス停の真向かいに、大きなスーパーマーケットがある。
しめた!ここなら三脚が売ってるかもしれない!
シューを忘れていただけで三脚ごと買い換えるのはもったいないが、背に腹は代えられない。
一縷の望みを持って、チェックインするまえに、スーパーに駆け込む。

スーパーマーケットはとくに観光客を目的としているふうでもなく、ふつうに地元の人たちが利用するみたいで
生活感のある食料品、日用品がずらーっと並んでいた。
長靴(こけるまえに買えばよかった)や、作業ズボン(こけるまえに買えばよかった)まで、なんでも揃っている。
しかし、どこをどうみても、三脚は売ってない。店員さんに聞こう。まてよ?フランス語で三脚ってなんて言うんだ?
iphoneで調べる。trepied(トレピエ)らしい。インターネットってなんて便利なんだ・・。さっそく聞いてみよう。

わたし「おばちゃん、とれぴえほしいねん。売っとう?」
店員のおばちゃん 「とれぴえ?は?なにそれ?」

う・・インターネットのうそつき・・。こうなったら、身振り手振りで説明するしかない。。

わたし 「ほら、このカメラあるやん?これをこうガーッと止めて、ダーッと脚がニョーッと出て、固定するやつ、ほら、あるやんか?」
店員のおばちゃん 「さっぱりわからん。もうちょっと賢く説明してーな」
わたし 「だーかーらー!こう、ガシッと止めてダーッと脚がニョーニョーニョーと3本出るやつやねんて!」
店員のおばちゃん 「あんたあほやろ?わたし、あほを相手してるほど暇ちゃうねん」
わたし 「ちがうねん(涙)ほら・・あ!そうや!画像を見せればええんや!ちょっとまってな、おばちゃん!」
店員のおばちゃん 「なんなん?ほんまにもう(笑)」

iphoneで三脚のサイトにつなげ、画像をおばちゃんに見せる

店員のおばちゃん 「なんや。三脚やんか。三脚なら三脚て、はよゆいいな。ここにはないで。サンマロのほうに行ったら売ってる店あるけど」
わたし 「どこそこ?遠いん?どれくらい離れとうん?」
店員のおばちゃん 「7qくらい」
わたし 「遠っ!こっからバスとか出とう?」
店員のおばちゃん 「バスはあらへん。車で行き」
わたし 「車なんてあらへん。。」

結局、三脚の購入は諦めるしかなかった。
しょうがないので、わたしはタワシとプラスチックのクーラーボックスの2つを買った。
タワシは安かったがクーラーボックスは20ユーロくらいした。
なぜ、タワシを買ったか。それは、靴の泥をキレイに拭い取るためである。
なんで、プラスチックのクーラーボックスを買ったか。それは、凱旋門賞の日、不測の事態に踏み台代わりに利用するためである。
競馬と写真をこよなく愛する一部のファンには、なんのことかわかっていただけるはずだ。また、5日目あたりで詳しく説明させていただく。

スーパーマーケットを出て、道路を挟んで向かいのメルキュールホテルに入る。
フロントにはおねえちゃんがひとりいた。

わたし 「ぼんじゅーる。チェックインしたいんやけど、ごめん、そのまえにちょっと靴汚れとうし、サッと自分で洗いたいねん。
ほら、タワシも持ってるし。ちょっと表に水道とかあらへんかな?」
フロントのおねえさん 「ああ、それならいっぺんに綺麗になる靴磨き機あるし、こっちおいで」
わたし 「え?そんなええもんあるん?ありがとう(^o^)」

連れて行ってもらった先には靴磨きの機械があった。なんや、タワシいらんかったわ(笑)
だが・・おねえさんがスイッチを何度入れても、うんともすんともいわない。

おねえさん 「ごめんごめん。故障してるわ(笑)まあ、ええよ靴なんて汚れるもんやし。気になるんやったら庭で洗ってくれてもええけど。」
わたし 「おおきに(汗)。ところでおねえさん、このホテルってとれぴえ(三脚)・・ってこれなんやけど(画像を見せる)レンタルとかできひんかな?」
おねえさん 「わるいけど、三脚はおいてないわ(笑)」

そらそやな・・と思いつつ、自宅のパソコンで予約して印刷したバウチャーを見せ、チェックインを済ませる。
案内された部屋はすごく綺麗で清潔だった。立地条件もいいし、個人的には4つ星のホテルだ。






部屋に入るも、まったりと休憩する気にはならない。わたしは写真を撮りに来たのだ。
それに、三脚がない状態で、いかに撮影するかをこれから考えねばならない。
とりあえず、シューのない三脚の脚とタワシを置いて、部屋を出る。
クーラーボックスは椅子代わりに使えるかも知れない。持って行こう。(←これが大正解だったりする)

ホテルから歩いて10分足らずの場所に、湾を横切る橋があった。
幸いなことに欄干がとても広く、カメラを置いて固定しても橋の下に落ちる心配がない。
とりあえず、カメラを置く。レリーズ(シャッタースイッチのついたリモコン)をセットする。
この状態だとあたりまえだが、安定している。だが、カメラの先のレンズの部分を若干上げないと、構図が安定しない。
苦肉の策として、あたりに落ちている一番大きさが手頃で形のいい石をレンズの下にかます。
石が大きすぎれば、レンズの先が上にあがり、空しか撮れない。小さければモンサンが写らない。
とっかえひっかえ、ようやくレンズの下にかます適度な石を見つけた。うん。だいじょうぶ。これなら構図もカメラも安定している。
ためしに撮ってみよう。カシャッ。



まあ、この明るさなら三脚いらんけどね。(^_^;)
iso400の絞り11でもシャッタースピードは800で切れる。(斜陽の色彩があまりに美しいので、若干アンダーで撮って、やや硬調気味に現像)
問題は暗くなってからだな・・。
いま、三脚はなくとも、カメラは一応安定している。
こういった場合、AF(オートフォーカス)で撮るよりも、絶対に手動でピントをあわせたほうがいい。
ライブビュー機能を利用し、自分がほんとうにピントをあわせたい部分を液晶画面に10倍で表示させ、
人差し指で、最も体の痛い(しみる)部分に塗り薬を塗るような感覚で、レンズをそーーーっと、ちょん・・ちょん・・と回しピントをあわせる。
黄昏、そして夕闇の雰囲気・空気感をいかに表現するか、イメージを模索しながら、マニュアルモードで、あらゆるパターンで撮りまくる。
斜陽のほどよい時間、夕暮れの本当に美しい時間は、ほんの一瞬しかない。その一瞬を逃さぬよう・・。



待つこと3時間。今しかないというタイミングが現れた。
F値11まで絞れば、露出時間は8秒。風が強く、この固定方法ではかなり長く感じる時間だ。
当然、レリーズを使い、体全体を使ってカメラに覆い被さって風を防ぐ。(むろん、絶対に触れてはいけない)
青のグランデーション、モンサンミッシェルの神聖な光・・
なんて美しいんだろう。。涙がこぼれる。
絶対に絶対に、この美しさの邪魔をしてはならない。
わたしがふつうに撮れば、いいだけのことだ。
横着にならず、誠実に被写体に向き合えばいいだけのことだ。
そう自分に言い聞かせながら、一心不乱にシャッターを切り続ける。



完全に日が暮れたころ、雨がぽつりぽつりと降り出してきた。
ふと気づけば、まわりには誰もいなくなっていた。
そろそろホテルに戻ろう。明日の予報も雨だ・・。
街灯というか、足下を照らす明かりという明かりが全くないので、iphoneの液晶を光らせて、それで足場を探りながら帰路につく。
今日はすごく充実してたけど、さすがに疲れた・・(^_^;)

ホテルについて、サッとシャワーを浴びて、爆睡。
ここだけは初日と全く同じだ。

3日目につづく


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